最新の虫歯予防の考え方を,お母さんや子供達にわかりやすく伝えたいという
裕子ドクターの願いが叶って出版できた絵本です。
どうしてむしばになるの?
岩崎書店(1300円)
井上裕子・作 夏目洋一郎・絵
むしばは けずってなおせばだいじょうぶ、とおもっていませんか?
どうして むしばが できたのかが わからなければ、なおしたあとも つぎつぎと むしばになってしまいます。くちのなかが どんなふうになっているか、このえほんをよむと、よくわかります。そして、はみがきをすることが たのしくなります。さあ、ハッピーくんと いっしょに くちのなかを のぞいてみましょう。
書評:1 日本ヘルスケア歯科学会のニュースレターから
カリオロジーをお母さん方に伝えたい
わが家には一回り年の離れた二人の娘がいます。昔から寝る前に絵本を読むのが習慣になっていて、今も幼稚園の年少の下の娘の寝る前の習慣は、
1) キシリトールガムを噛むこと(これでキシリトールガムが必要だというのは隠れた問題があるのですが)
2) 歯磨きと仕上げとレノビーゴ
3) 読んでもらう絵本を3冊選ぶこと
となっています。お陰で二人とも絵本が大好きで、上の娘は下の娘が幼稚園でもらってきた絵本を見つけると真っ先に読んでいるありさまです。
子供の集中力に感心させられることが良くあります。まだ字も読めない頃、聞いているだけですっかり覚えてしまって、お父さんが(たいていはお父さんの方が眠くて半分寝ぼけて読んでいる)1行飛ばして読んでも、変な顔をして見られてしまったり、「ちがうよ」と叱られたりしてしまいます。また、小さい頃に何度も繰り返し読んだことは大きくなってもよく覚えているようです。
「どうしてむしばになるの?」はそんな子供達に、お母さんやお父さんが読んであげることで自然と歯を守る考え方が身につく絵本だと思います。上の娘は、熊の医者が「ガラゴロガラゴロゴロパッチ」といううがいで子供の風邪を治す絵本を読んでいて、小学校に入ってからもそれで治していたくらいですから、この本の四つのちかい!
「あまいおかしをへらします!」
「テレビをみながら、あそびながら、だらだらたべません!」
「たべたらすぐ!ねるまえはかならずはをみがきます!」
「フッソをつかいはをまもります」
はきっと子供達の記憶にずっと残るでしょう。
本会の会員でもある著者の井上裕子先生も二人の子供さんを育てられ、何とかカリオロジーをお母さん方に伝えたくてこの本を書かれました。巻末には保護者の方や幼稚園、保育園の先生方のために、難しくなりがちなカリオロジーをわかりやすく解説されています。
小さい子供さんがおられる方はご自宅に、また診療室の待合室に是非一冊どうぞ。
(神戸市 歯科医師 研究会会長 藤木省三)
書評:2 雑誌「歯科衛生士」から
本書は、歯のなかよしチームのキャプテン”ハッピー”を主人公に、予防に関する科学的な知識をわかりやすく紹介した絵本である。「早期発見、早期予防」という新しい考え方を基盤に、簡単に楽しくむし歯予防ができるように構成されている。
「なにか こまったことが おこったら、”なぜ”そのもんだいが おこったかを じっくり かんがえてみることが たいせつなんじゃよ。 ”なぜ”がわかれば どうすればいいかも わかってくる。」本書では、その言葉のとおり、一貫して”なぜ”を考えていく。
とりわけ注目すべきは、むし歯のメカニズムを考えるうえで重要となる歯の脱灰と再石灰化についての描写である。子どもには難しいテーマと思われるが、本書では「ハッピーくんたちのいちにち」と題して、1日の間の「きれいなつば(唾)のせかい」と「さん(酸)のせかい」の間の行き来をイラストで表現することで、そのメカニズムをわかりやすく紹介している。また、「たべたらすぐみがきます!」「フッソをつかいます!」といったトピックも設け、むし歯ができない口腔環境を作るための方法を、かわいいキャラクターを登場させて解説している。
巻末の解説も必見、待合室の本としても、ぜひオススメしたい一冊である。