アドバイスだけで不正咬合が治るというのは、最小限の介入の最良の治療だと思っています。
人間の歯は、通常はちゃーーんと並ぶようにできているのです。未開の地に住む原住民に不正咬合は、ほとんどないそうです。文明の影響を受けると、虫歯や不正咬合が出現する。ということは、アメリカのプライスという先生が、世界じゅうを回って調査されて、報告されています。
ヒトは元来動物なのですから、自然に近い食生活をすることが、体の発育には良いのは当然ですね。特に、成長発育期の子供達には、原住民のような食生活させてあげてほしいと思います。具体的にどうするの?となると難しいのですが、柔らかい加工食品ばかりではなくて、噛み応えのある栄養に富んだ食品を選びたいですね。
HPにも掲載していますが、両方の歯でしっかりかんで食べる。口を閉じて、鼻で息をする。姿勢、舌の位置に気をつける。といったアドバイスと簡単な練習だけで、小さなお子さんなら、不正咬合が治ってしまう場合もあります。
アドバイスだけで治る。ということは、ちょっと気をつけるだけで防ぐことができる不正咬合がある。ということです。子供の健全な発育を引き出してあげられるよう、気をつけていきましょう。
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アドバイスだけで治る?
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6万円と60万円
昨日来られた新患の患者さんのお母さんからのご質問でしたが、「矯正って、6万円だった。という人と、60万円だったという人と、なんで一桁も違うのですか令」
そうですよね。なんで令って思いますよね。きっと、費用体系が違うのでしょうね。どこまでの治療費か?ということをよく聞くことが大切ですよね。それから、同じ60万円でも内容が違うこともあるでしょうね。
これは、矯正だけでなく、どの業界にも言えることだと思いますが、特に、矯正はバラツキが大きいかもしれません。
きちんとした検査を行い、問題点をすべてリストアップし、レントゲン分析、模型分析などを行い、患者さんにわかりやすく説明し、最良の治療方針を患者さんといっしょに決定すること。
矯正だけでなく、予防歯科もきちっとしていて、虫歯ができないように管理してくれること。
ちゃんと責任を持って、大人になるまで診てくれること。
力子ども達の気持ちをひきつけておいてくれること。
曆後戻りがないように、舌や唇の癖についても指導してくれること。
などなど、矯正治療が本当に成功するためには、いろいろなファクターが揃うことが必要とされます。
”本当に成功する”ということは、見た目だけじゃなくて、大人になっても、年をとっても、大丈夫な歯並びを完成すること、患者さんご自身に予防の力をつけていただき、ご自身の歯をいとおしく思っていただけるようになることだと、私は思っています。
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There is no easy case!
”簡単な症例なんてひとつもない獵”この言葉は、私が若い頃、アメリカ人の矯正医アレキサンダー先生から聞いた言葉です。そのとき、私は”ふーーん。そうなの。”ぐらいにしか思っていなかったのですが、矯正臨床28年が過ぎた今は、”その通り
”とつくづく思うのです。
今日も患者さんとお話ししていたのですが、”簡単に治せますよ。”と言われるとそちらに惹かれるとのことでした。”なるほど、そうなんだろうなぁ。。”って思います。私も若い頃は、”歯を押すか引くかすればいいんだから、矯正は簡単獵”なんて、とんでもないことを思っていましたが、今は、矯正治療の奥深さを感じる毎日であり、こんな症例は、こういう点とああいう点に気をつけないと。。。簡単そうに見えて、歯を安易に抜歯するとエライ目に合うんだよなぁ。。なんて、初診相談の時には、頭をフル回転させて、あらゆるリスクをリストアップして、それらをふまえながら、ご説明しています。
そして、顔の横からと前からのレントゲン写真、歯や顎関節のレントゲン写真と模型、虫歯になりやすさや歯茎の状態、舌や口唇の動きなど、すべてを診査したうえで、最も適した治療方針を選択します。歯科矯正には、その能力が問われるのです。
最近、”簡単”とか”早い”とか、、、そう言った宣伝文句が流行っているようですが、矯正治療開始時には、セカンド、サードオピニオンを聞いて、慎重にスタートしてほしいと思っています -
プロフェショナル辣腕弁護士さん
20日のNHKのプロフェショナルで肝炎患者さんを救う辣腕弁護士さんが紹介されていました。言葉そのものは忘れましたが、”弁護する人の心と自分の心がひとつになるようになって、勝訴できるようになった。昔は負けてばかりだった。”っておっしゃっていました。ふと、矯正も同じだ
って思いました。
矯正治療も、患者さんの心と医療者の心が、ひとつになったとき、不正咬合に勝てるんだよなぁ。。。って思います。私たちは医療の立場から、治療方針や技術や指導のうえでベストを尽くし、患者さんは歯磨きや装置のたいへんさや、舌や唇の悪い癖との戦いに努力してくださって、その二つが車の両輪のように助け合って始めて、素晴らしい成績に終了できるんだよなぁ。。。って思います
私も若かった頃、自分の技術だけで治せると思い込んでいた頃は、勝率が低かったような気がします。
患者さんの装置を外す瞬間というのは、私は体育会系なので、力を合わせて勝利を勝ち取った瞬間
と同じ感動があります。
弁護士さんも同じなんだろうなぁ。。って思いました。
最近は、矯正用インプラントなど、患者さんの協力がなくても治療ができますよ。といううたい文句の器具も出てきていますし、いとも簡単に治せます。といった宣伝も出ていますが、もちろん、それらは治療の助けにはなりますが、どんな装置を使っても、最終的には、患者さんと医療者の心のがひとつにならないと成功しないと思うのです。
明日からも勝利に向かって、患者さんと心をひとつにして力を合わせて、がんばるぞぉ!!!おぉ!!!(ちょっと体育会系すぎ?
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矯正歯科の打率
先日、元阪神タイガースの八木選手のお話を伺いました
。「4打席1安打か3打席1安打かの違い、たった1本の違いが、並か一流かの差になる。集中しているかどうかは、結果で判断されるだけのこと、その結果は練習から生まれるもの。」と厳しいプロの世界について語っておられました。なるほど。。。流石。。。
矯正歯科医の並か一流も打率で決まると言えるでしょう。何割の患者さんを、80歳90歳まで安心して過ごせる結果に終われるか。だと思います。矯正の場合、打率が3割では一流とは言えないわけで、やはり9割以上で、初めて一流といえると思います。10割を目指してがんばっていますが、舌や口唇の癖の強い人や、顎関節の問題の大きい人は、難しいものがあります。思わぬ悪条件を伴う場合もありますし、過去には、患者さんとの思い違いで苦い経験をしたこともあります。
医療はどの分野でも、例えば、がん治療や救急医療でも、誰が担当しても助かる症例、逆に誰が担当しても治らない症例、そして、その間に位置する、一流にかかれば治るのに、そうでないと治らない症例があります。
患者さんには、その現実を知っていてほしいと思います。矯正装置がすばらしければ、誰にでも治せるものではないのです。矯正は特に専門性が高いのと、治療の成果がわかるのに時間がかかるので、その評価がとても難しいと思われますが、うわべだけではなく、地域の評判や複数のお友達からの情報を集めて、矯正治療終了時あるいは、終了後何年か後の打率をしっかりと見定めて(これってホント難しいよね!)、矯正治療を開始してほしいと思います
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今日、一番うれしかったこと
小学3年生のときに、将来、手術になるかもしれないようなすごい出っ歯さんだったI君獵第一期治療、観察期間、第二期治療、安定を確認する保定期間とずーーっと続けて、いよいよイノウエ矯正歯科卒業の日になりました
今は大学2年生。すっかりりっぱに成長されました。昔の模型や写真を見ながら、いろいろなシーンをなつかしく思い出して、”きれいになった歯を一生大切にしてね。。”ってお話していました
。そして、”I君が小さい時の舌や口唇のビデオが、悪いサンプルとしてとてもわかりやすいので、他の患者さんに教えてあげるために使わせてほしいんだけど嫌かしら?”っておそるおそるたずねたところ、”役に立つんだったらいいよ
”ってあっさりOKをくれました
。なんだか、感慨無量って感じの喜びで、日頃の苦労が吹っ飛びました。I君ありがとう
。これからの患者さんのために、大切に使わせていただきますね
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本物の矯正治療
以前のブログに、アメリカは矯正治療の歴史が長いので、アメリカ人のお母さんは、矯正治療のことをよく知っているという話をしましたが、日本の患者さんにも、本物の矯正治療とはどんなものかを早く知ってもらいたいと思っています獵
不正咬合はさまざまな要因から生じていますから、一口に出っ歯や受け口と言っても、どれ一つとして同じ症例はありません。ですから、日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)は、その成り立ちがどうなっているのか、どう治療すべきなのか、詳しい検査を行います
正貌、側貌の評価(お顔の形の評価)、模型分析(歯型をとって、歯のサイズを測ったり、噛み合わせの状況をしっかり把握していきます。)セファロ分析(横顔のレントゲンを撮って、標準の骨格と比較し、受け口でも、上あごが小さいためか、下あごが大きいためか、あごの大きさには問題がなく、歯の角度の問題なのか、を判断していくための分析です。)を行います。正面からのレントゲンでは、左右の非対称がないか調べます。あごの動きの診査、顎関節の状況の把握、舌や口唇の癖のチェックなど、さまざまな情報から、最も適した治療法を探っていきます。同じ出っ歯に見えても、えらがはったタイプとお公家さんのようなあごのタイプの人では、対応が変わります。同じぐらいのガタガタに見えても、骨格のタイプで抜歯・非抜歯の対応が異なります
それが本物の矯正治療の検査、診断、治療方針の決定です。成長発育の様子をしっかり見据えて、治療のタイミングを決定するのも重要です。矯正治療の成否の70%は検査、診断、治療方針の決定にかかっていると言われています
きちんとした本物の矯正治療かどうか、しっかりと確かめてから、治療をスタートしてもらいましょう
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イノウエ矯正歯科の改善(その3:顎関節のチェック)
いつも長話になってしまうので、今日はできるだけ手短に!
イノウエ矯正歯科では、10年ほど前から、顎関節のチェックを行うようになりました。開業の頃は、あまり気にしていなかったのですが、舌癖などと同様にもう一つの大切な機能面でのチェックポイントだと気付いたのです。
そこで、検査の際には、安静位といって顎が一番楽な位置での噛み合わせを記録して、患者さんがご自身でしっかり噛んだ時の噛み合わせとのずれをチェックします。また、アメリカのサンディ先生に習った診査方法で、顎の動きもチェックします。顎関節の断層撮影も行います。初めは顎の音を聞いてもよくわからなかった私ですが、最近では、問診(これまでの様子を患者さんからお伺いすること)と触診(顎の動きを指先で捉えること)で、顎関節の状況がほとんどわかるようになりました。念のため、関節円板という軟組織の状況を診るために、MRIという大きな病院でないとできない検査をお願いすることもありますが、結果はほとんど”やっぱりね!”という感じです
。
顎関節症は、噛み合わせの状態と、実際の関節の状態と、患者さんの自覚症状が、1対1の対応にならないという点で、ややこしい疾患です。あまり心配しすぎることはないのですが、小さい時からの不正咬合や癖が原因となって、自覚症状がなくても、問題が大きくなっていることもあるので、早めに気付いて問題を取り除いておくことが大切です。
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イノウエ矯正歯科の改善(その2:口腔周囲筋機能療法)
今日はその2!口腔周囲筋機能療法ってなんだ令英語でMyofunctional therapy獵、略してMFT
舌癖や口唇癖が不正咬合の原因になっている場合に、それらの癖を治す練習のことを言います。
阪大矯正科の医局に在籍した頃から、MFTの存在は知っていましたが、医局で取り上げられることもなく、開業したときもそれほど気にしていませんでした。でも、長年、臨床を続けていくと、どうして、この患者さんは他の患者さんと同じようにちゃんと治療しているのに、私が目指しているゴールに終了してあげられないのかしら?ちゃんと治してあげたつもりなのに、後戻りをしてくるのはどうして?
と悩んでいるとき、それは、舌や口唇の機能に問題がある患者さんなのだ。ということに気付いたのです
。
そこで、1998年に私は、アメリカの筋機能療法士の先生のオフィスで勉強させてもらい、その前後から衛生士を東京で開かれている講習会に参加させ、うまく治らない患者さんにMFTをお願いしてみたのです。手ごたえを感じ始めてからは、予防歯科と同様にMFTのシステムを作り、衛生士といっしょに検査時の評価、症例検討会、ビデオ撮影、オリエンテーション、MFTというフローチャートに沿って、治療に取り組んでいます。
今では、5人の衛生士たちは、ずいぶん経験を積み、優秀なトレーナーとして育ってくれています。
単純な評価が難しいので、エビデンスというところまでは、なかなかいかないのですが、現在、形態と機能の関係、MFTの有効性を少しでも明らかにしようと奮闘中です。海外の先生にも、その大切さを評価していただきました。
なかなか舌癖や口唇癖を取りきるのは難しいことなのですが、イノウエ矯正歯科では多くの患者さんが、マスターしてくれています。今も悪戦苦闘をしいられている患者のみなさん。がんばってくださいね。
80歳90歳まで大丈夫な咬合、後戻りをしない矯正治療には、MFTが欠かせません。今の患者さんは、イノウエ矯正歯科にMFTがあってよかったですね。(練習はたいへんだけど。。)昔の患者さん。ごめんなさいね。 -
バンコクで開かれた学会で発表してきました
ちょっとブログをお休みさせていただいている間に、バンコクで開かれたAPOC(Asian Pacific Orthodontic Congress)で、口演とポスターで発表してきました。口演は当院における舌癖口唇癖を持つ患者さんへの取り組みについて、ポスターは、より善い矯正界を作りたいという青空研究会の活動についての報告でした。アジア、オーストラリアの矯正歯科の先生方が集まって研鑽を積もうという会ですが、最近感じるのは、アジアの先生方の猛烈な進歩です。英語ははるかに日本人のレベルを上回り、欧米との交流もさかんで、日本人はガラパゴス諸島のイグアナちゃんになってきているような感じです。グローバルスタンダードを理解しながら、愛国心を持つ。日本ではこの逆が広まっているような感じがして残念です。写真中央は大会長のソムチャイ先生です。とても素敵な方でした。