Posts Tagged ‘唇’

抜歯・非抜歯の判断

金曜日, 5月 16th, 2008

 今日は、久しぶりにちょっと難しいお話bearing.gifでも、為になるお話coldsweats01.gif
 抜歯して治すとか抜歯しないで治すとか、とても大切なことなのに、患者さんにはよくわからない部分だと思います。ただ拡大して歯を並べれば良いというものではないeye.gifことを、逆に、こんなにガタガタがひどいので抜くのだろうと思っていても、抜かずに拡大することもあるeye.gifことを、すなわち、目の前の歯のガタガタの程度だけで、矯正専門のドクターは判断しているのではないsign03.gifということを知っておいてほしいと思います。話せば長くなるので、ひとつずつ。
 今日は、横顔の矯正専用のレントゲン写真(セファロと言います)結果から
 その1:横顔の形の特徴について
 簡単に説明すると、横顔が王監督やSMAPの草薙君のようにがっしりとエラがはったお顔立ちの人ならば、非抜歯で治療しようとします。かなりのガタガタでも、拡大することが可能な場合があります。
 逆に、徳川時代の終わりの方の将軍さまのように、毎日、柔らかい高貴なお食事ばかりを召し上がっていて、あごの筋肉の発達が悪く、エラのはりがなく、顔の一番下の部分であるおとがい部が後方にあり、アゴナシのような横顔の人(骨格性の開咬と言います。もちろん遺伝的な要素もあります。)は、抜歯の確率が高くなります。無理して拡大すると、さらに横顔の形を悪くし、口元が出て、唇を閉じるのが難しくなり、噛み合わせも安定しにくくなる可能性が高くなります。
 その2:前歯の角度について、
 上の前歯と、下の前歯の角度が、顔の基準平面に対して、何度であるかの標準値があります。その標準値に対し、治療開始前からどちらに傾斜しているかで、判断します。これは素人の方にも簡単ですよね。すでに、前に出ている人では、拡大すると円周が長くなるので、さらに出てきます。上の歯も、下の歯も前に出すぎて、上と下の歯のなす角度(Inter incisal angleと言います)が、小さくなりすぎていると抜歯の確率が高くなります。時々、拡大されすぎて、口元が出すぎて唇が閉じなくて、やっぱり抜歯の方がいいですね。となってしまうこともありますので、注意してください。
 逆に、内側に傾斜している人は、ガタガタの程度が大きくても、むしろ拡大して前に出した方が良い場合もあります。
 
 他にも判断のための要素があります。日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)はその全部を総合的に判断して、抜歯非抜歯のお勧め度を判断します。そして、患者さんとお話をしていく中で、最終的な治療方針を決定します。
 明日は、他の判断要素についてこの続きをお話しますねheart02.gif
 

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矯正歯科の打率

日曜日, 5月 11th, 2008

 先日、元阪神タイガースの八木選手のお話を伺いましたscissors.gif。「4打席1安打か3打席1安打かの違い、たった1本の違いが、並か一流かの差になる。集中しているかどうかは、結果で判断されるだけのこと、その結果は練習から生まれるもの。」と厳しいプロの世界について語っておられました。なるほど。。。流石。。。shine.gif
 矯正歯科医の並か一流も打率で決まると言えるでしょう。何割の患者さんを、80歳90歳まで安心して過ごせる結果に終われるか。だと思います。矯正の場合、打率が3割では一流とは言えないわけで、やはり9割以上で、初めて一流といえると思います。10割を目指してがんばっていますが、舌や口唇の癖の強い人や、顎関節の問題の大きい人は、難しいものがあります。思わぬ悪条件を伴う場合もありますし、過去には、患者さんとの思い違いで苦い経験をしたこともあります。
 医療はどの分野でも、例えば、がん治療や救急医療でも、誰が担当しても助かる症例、逆に誰が担当しても治らない症例、そして、その間に位置する、一流にかかれば治るのに、そうでないと治らない症例があります。
 患者さんには、その現実を知っていてほしいと思います。矯正装置がすばらしければ、誰にでも治せるものではないのです。矯正は特に専門性が高いのと、治療の成果がわかるのに時間がかかるので、その評価がとても難しいと思われますが、うわべだけではなく、地域の評判や複数のお友達からの情報を集めて、矯正治療終了時あるいは、終了後何年か後の打率をしっかりと見定めてeye.gif(これってホント難しいよね!)、矯正治療を開始してほしいと思いますsign03.gif
 八木選手.jpg

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今日、一番うれしかったこと

土曜日, 5月 10th, 2008

 小学3年生のときに、将来、手術になるかもしれないようなすごい出っ歯さんだったI君獵第一期治療、観察期間、第二期治療、安定を確認する保定期間とずーーっと続けて、いよいよイノウエ矯正歯科卒業の日になりましたscissors.gif今は大学2年生。すっかりりっぱに成長されました。昔の模型や写真を見ながら、いろいろなシーンをなつかしく思い出して、”きれいになった歯を一生大切にしてね。。”ってお話していましたheart02.gif。そして、”I君が小さい時の舌や口唇のビデオが、悪いサンプルとしてとてもわかりやすいので、他の患者さんに教えてあげるために使わせてほしいんだけど嫌かしら?”っておそるおそるたずねたところ、”役に立つんだったらいいよshine.gif”ってあっさりOKをくれましたscissors.gif。なんだか、感慨無量って感じの喜びで、日頃の苦労が吹っ飛びました。I君ありがとうheart02.gif。これからの患者さんのために、大切に使わせていただきますねnote.gif

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本物の矯正治療

日曜日, 5月 4th, 2008

 以前のブログに、アメリカは矯正治療の歴史が長いので、アメリカ人のお母さんは、矯正治療のことをよく知っているという話をしましたが、日本の患者さんにも、本物の矯正治療とはどんなものかを早く知ってもらいたいと思っています獵
 不正咬合はさまざまな要因から生じていますから、一口に出っ歯や受け口と言っても、どれ一つとして同じ症例はありません。ですから、日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)は、その成り立ちがどうなっているのか、どう治療すべきなのか、詳しい検査を行いますscissors.gif
 正貌、側貌の評価(お顔の形の評価)、模型分析(歯型をとって、歯のサイズを測ったり、噛み合わせの状況をしっかり把握していきます。)セファロ分析(横顔のレントゲンを撮って、標準の骨格と比較し、受け口でも、上あごが小さいためか、下あごが大きいためか、あごの大きさには問題がなく、歯の角度の問題なのか、を判断していくための分析です。)を行います。正面からのレントゲンでは、左右の非対称がないか調べます。あごの動きの診査、顎関節の状況の把握、舌や口唇の癖のチェックなど、さまざまな情報から、最も適した治療法を探っていきます。同じ出っ歯に見えても、えらがはったタイプとお公家さんのようなあごのタイプの人では、対応が変わります。同じぐらいのガタガタに見えても、骨格のタイプで抜歯・非抜歯の対応が異なりますsign03.gif
 それが本物の矯正治療の検査、診断、治療方針の決定です。成長発育の様子をしっかり見据えて、治療のタイミングを決定するのも重要です。矯正治療の成否の70%は検査、診断、治療方針の決定にかかっていると言われていますsign03.gif
 きちんとした本物の矯正治療かどうか、しっかりと確かめてからeye.gif、治療をスタートしてもらいましょうsign03.gif

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イノウエ矯正歯科の改善(その2:口腔周囲筋機能療法)

火曜日, 4月 8th, 2008

 今日はその2!口腔周囲筋機能療法ってなんだ令英語でMyofunctional therapy獵、略してMFTsign03.gif舌癖や口唇癖が不正咬合の原因になっている場合に、それらの癖を治す練習のことを言います。
 阪大矯正科の医局に在籍した頃から、MFTの存在は知っていましたが、医局で取り上げられることもなく、開業したときもそれほど気にしていませんでした。でも、長年、臨床を続けていくと、どうして、この患者さんは他の患者さんと同じようにちゃんと治療しているのに、私が目指しているゴールに終了してあげられないのかしら?bearing.gifちゃんと治してあげたつもりなのに、後戻りをしてくるのはどうして?weep.gifと悩んでいるとき、それは、舌や口唇の機能に問題がある患者さんなのだ。ということに気付いたのですeye.gif
 そこで、1998年に私は、アメリカの筋機能療法士の先生のオフィスで勉強させてもらい、その前後から衛生士を東京で開かれている講習会に参加させ、うまく治らない患者さんにMFTをお願いしてみたのです。手ごたえを感じ始めてからはcoldsweats01.gif、予防歯科と同様にMFTのシステムを作り、衛生士といっしょに検査時の評価、症例検討会、ビデオ撮影、オリエンテーション、MFTというフローチャートに沿って、治療に取り組んでいます。
 今では、5人の衛生士たちは、ずいぶん経験を積み、優秀なトレーナーとして育ってくれていますscissors.gif
 単純な評価が難しいので、エビデンスというところまでは、なかなかいかないのですが、現在、形態と機能の関係、MFTの有効性を少しでも明らかにしようと奮闘中です。海外の先生にも、その大切さを評価していただきましたcoldsweats01.gif
 なかなか舌癖や口唇癖を取りきるのは難しいことなのですが、イノウエ矯正歯科では多くの患者さんが、マスターしてくれています。今も悪戦苦闘をしいられている患者のみなさん。がんばってくださいねcoldsweats01.gif
 80歳90歳まで大丈夫な咬合、後戻りをしない矯正治療には、MFTが欠かせません。今の患者さんは、イノウエ矯正歯科にMFTがあってよかったですね。(練習はたいへんだけど。。)昔の患者さん。ごめんなさいね。

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バンコクで開かれた学会で発表してきました

木曜日, 4月 3rd, 2008

ちょっとブログをお休みさせていただいている間に、バンコクで開かれたAPOC(Asian Pacific Orthodontic Congress)で、口演とポスターで発表してきました。口演は当院における舌癖口唇癖を持つ患者さんへの取り組みについて、ポスターは、より善い矯正界を作りたいという青空研究会の活動についての報告でした。アジア、オーストラリアの矯正歯科の先生方が集まって研鑽を積もうという会ですが、最近感じるのは、アジアの先生方の猛烈な進歩です。英語ははるかに日本人のレベルを上回り、欧米との交流もさかんで、日本人はガラパゴス諸島のイグアナちゃんになってきているような感じです。グローバルスタンダードを理解しながら、愛国心を持つ。日本ではこの逆が広まっているような感じがして残念です。写真中央は大会長のソムチャイ先生です。とても素敵な方でした。

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最近の矯正装置

金曜日, 3月 14th, 2008

最近、見えない矯正装置というのが、インターネットをにぎわしていますが、私はどちらかとういうとあまり賛成していません。矯正治療を美容院でヘアスタイルを変える延長線上ではなくて、胃がんの治療の手前と私は思って欲しいのです。大切な歯、今後何十年と毎日お世話になる歯の矯正なのですから。。胃がんの手術をする時、目立たないように切ってください。ってお願いするでしょうか?もちろん、できるだけの配慮は必要でしょうが、やはり治療成績が優先されると思うのです。矯正治療で100点満点をとるのは難しく、外側からワイヤーで治療しても全症例100点というのは、専門医でも難しいです。特に、舌や口唇の癖のある人、顎関節症を伴っている人の治療は、外からワイヤーを使っても苦戦をしいられます。裏側からだとどうでしょうか?歯の外側と裏側にシールを貼ってください。って言われたら、どちらが貼りやすいでしょうか?外ですよね。裏側からもできますが、きっと同じ治療を同じ先生がされた場合、外側の方が治療成績がいいはずですよね。さらに、インビザラインといって、透明なマウスピースを交換する方法などは、もっと治療成績が不確実になってきます。簡単な症例であれば問題はありませんが、何十万というお金を払って、これ以上は無理です。これ以上は治りません。とならないようにしたいものです。

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プロフェッショナル

水曜日, 2月 6th, 2008

3日坊主だとしたら、ブログ連続は今日で終わりかもしれませんが。。昨晩、NHKのプロフェッショナルを見ました。3つ星シェフの自分の仕事への真摯な姿に感動しました。ふと、昨日の初診相談を思い出していました。ちゃんと返事のできる気持ちのいい2年生の男の子でした。出っ歯で強い下口唇癖があって、虫歯の乳歯がいっぱいあって、でも、虫歯が一本もない、歯並びのいいりっぱな青年に育つよう、いっしょにがんばろうね。って約束したことを。カリエスリスクを下げて、口腔周囲筋機能療法(MFT)をがんばって、取り外しのできる矯正装置をしっかり使ってもらおう。私たちはこの子が楽しく続けられるよう、雰囲気作りもがんばらなくちゃ。みんなでがんばって、素晴らしいゴールにたどり着く。それがホントの矯正治療。偉そうに言う私も、医局の2,3年目で一人前と思っていた時期がありました。アルバイトでも、ちゃんと治療しているつもりでいました。でも、そんなんじゃない。プロの矯正治療は、患者さんと協力しながら、原因となっている習癖を取り除き、虫歯や歯周病のコントロールをし、80歳、90歳まで大丈夫な口腔を作り上げていく、それが、プロの矯正だって。くしくも、その子のお母さんもお姉さんも、矯正治療を途中で断念したとのこと。それは本物の矯正じゃない。矯正ってそんなもの。って思わないで、最後の素晴らしいゴールまで、いっしょに楽しくがんばろう。その実現のために、私とスタッフ達は、3つ星シェフと同じように、プロとして最大の努力を重ねていくことを惜しまない。ちょっとかっこつけすぎ!?!?だって、テレビがそんな風だったんだもの!!

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舌癖

日曜日, 2月 18th, 2007

最近、舌癖の質問をよく受けます。以前からとても大切だと思っていましたので、一般のみなさんに知られるようになってきたことは、とてもうれしいことです。歯並びを悪くする原因のほとんどが、舌癖や口唇癖、口呼吸や姿勢に関与しているというのが、半世紀以上、一生懸命、矯正治療に携わってきた私の意見です。いくら装置による治療をしても、原因となっている舌癖や口唇癖を、そのままにしておいては、後戻りをしてあたりまえです。まだ、口腔周囲筋機能療法の効果について、疑問視する意見もありますが、イノウエ矯正歯科では、子どもたちも大人の方も、一生懸命練習に励んでくださっていて、どんどん治療成果が出ていることをうれしく思っています。幼い時の小さな癖に気をつけることは不正咬合の予防に繋がりますので、チェックしてもらいたいと思います。

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金賞!おめでとう!

水曜日, 2月 22nd, 2006

またまた、イノウエ矯正歯科の井上裕子です。衛生士のSSが、口腔周囲筋機能療法(MFT)の講習会で、お手本となる動作の審査で、金賞に輝きました!說舌を上あごに吸い付ける動作(ポッピング)や、水を口の奥に送り込む動作(サッキング)など、正しい嚥下(飲み込み)の基本動作が指導者としてきちんとできているかどうかのチェックがあったようです。SSが毎日、患者さんの口唇咽や舌の動きのレッスンに熱心に取り組んでいた結果だと思い、院長としてとてもうれしく思っています。さて、舌は、ぼーっとしている時、どこにあるのか知ってますか令 重力に反して、うわあごに吸い付いていればOK!です。知らんかった。。ってびっくりされる方もたくさんおられます。それから、口唇を閉じて鼻呼吸をすることも、お口の健康にはとても大切なんだということをお伝えして、今日は終わります。

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