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社説:歯と口腔健康条例 県民運動で健康長寿を
9月秋田県議会で議員提案による「歯と口腔(こうくう)の健康づくり推進条例」が成立、10月に施行された。歯と口腔の健康は栄養バランスの取れた食生活を可能にし、生活の質の維持につながる。高齢者の認知症や誤嚥(ごえん)性肺炎を防ぐ効果もあるとされる。条例施行を機に県や市町村、医療保健関係者、県民がこれまで以上に歯と口腔の健康づくりに向けた取り組みを進め、県民運動として盛り上げていきたい。
同様の条例は新潟県が2008年に初めて制定して以降、全国に広がっており、本県は28例目となる。基本理念には県民が歯と口腔の健康づくりに主体的に取り組むことと、効果的な保健医療サービスを受けられる環境が整備されることを掲げた。また、子どものフッ化物洗口(うがい)推進や、歯周病対策、歯科検診の充実など13項目を基本的施策として挙げている。
条例は歯と口腔に関する本県の実情に合わせて、県の施策の方向性を明確化していることが特徴と言える。
本県は全国と比べ、子どもの虫歯が多い。06年度の調査で12歳児の虫歯は平均2・4本。11年度は1・8本に減ったものの、全国40位だった。トップの新潟(0・6本)とは大きな開きがある。
県は既に虫歯予防に効果が高いフッ化物洗口を幼稚園・保育所、小中学校などで推進しており、昨年度は全施設の半数近い381施設が取り組んでいる。これをさらに広げることも大切だが、より重要なのは子どもたちが歯についての正しい知識を持ち、バランスの取れた食生活や歯磨きの習慣をしっかりと身に付けることだろう。それが大人になってからの虫歯、歯周病の予防につながるからだ。
80歳になっても自分の歯を20本以上残す「8020運動」が展開されている。本県の達成率は昨年調査で35・9%と、全国の38・3%を下回る。また10年度の肺炎による死亡率は10万人当たり143・1人で、全国で3番目に高かった。高齢者はのみ込む力が弱くなり、誤嚥性肺炎を起こしやすいことも影響しているとみられる。何でも食べられる歯を維持し、口腔内を清潔に保つことは健康寿命を延ばす上からも不可欠だ。
県は4月、健康推進課内に口腔保健支援センターを設置。4人の歯科衛生士が、希望する幼稚園・学校や高齢者施設を訪問して洗口、歯磨き、口腔ケアなどの指導に当たっている。全県をカバーしてきめ細かに対応するには、県・市町村や歯科医師会などが連携し、さらに体制を強化する必要があるだろう。
歯と口腔の健康は個人の生活の質を向上させる。健康長寿者が増えれば、医療・介護のコスト抑制や、社会の活力づくりも期待できる。全国に先んじて少子高齢化が進む本県だからこそ、子どもばかりでなく、成人、高齢者も含めて歯と口腔の健康を守りたい。