抜歯・非抜歯の判断
今日は、久しぶりにちょっと難しいお話でも、為になるお話。
抜歯して治すとか抜歯しないで治すとか、とても大切なことなのに、患者さんにはよくわからない部分だと思います。ただ拡大して歯を並べれば良いというものではないことを、逆に、こんなにガタガタがひどいので抜くのだろうと思っていても、抜かずに拡大することもあることを、すなわち、目の前の歯のガタガタの程度だけで、矯正専門のドクターは判断しているのではないということを知っておいてほしいと思います。話せば長くなるので、ひとつずつ。
今日は、横顔の矯正専用のレントゲン写真(セファロと言います)結果から
その1:横顔の形の特徴について
簡単に説明すると、横顔が王監督やSMAPの草薙君のようにがっしりとエラがはったお顔立ちの人ならば、非抜歯で治療しようとします。かなりのガタガタでも、拡大することが可能な場合があります。
逆に、徳川時代の終わりの方の将軍さまのように、毎日、柔らかい高貴なお食事ばかりを召し上がっていて、あごの筋肉の発達が悪く、エラのはりがなく、顔の一番下の部分であるおとがい部が後方にあり、アゴナシのような横顔の人(骨格性の開咬と言います。もちろん遺伝的な要素もあります。)は、抜歯の確率が高くなります。無理して拡大すると、さらに横顔の形を悪くし、口元が出て、唇を閉じるのが難しくなり、噛み合わせも安定しにくくなる可能性が高くなります。
その2:前歯の角度について、
上の前歯と、下の前歯の角度が、顔の基準平面に対して、何度であるかの標準値があります。その標準値に対し、治療開始前からどちらに傾斜しているかで、判断します。これは素人の方にも簡単ですよね。すでに、前に出ている人では、拡大すると円周が長くなるので、さらに出てきます。上の歯も、下の歯も前に出すぎて、上と下の歯のなす角度(Inter incisal angleと言います)が、小さくなりすぎていると抜歯の確率が高くなります。時々、拡大されすぎて、口元が出すぎて唇が閉じなくて、やっぱり抜歯の方がいいですね。となってしまうこともありますので、注意してください。
逆に、内側に傾斜している人は、ガタガタの程度が大きくても、むしろ拡大して前に出した方が良い場合もあります。
他にも判断のための要素があります。日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)はその全部を総合的に判断して、抜歯非抜歯のお勧め度を判断します。そして、患者さんとお話をしていく中で、最終的な治療方針を決定します。
明日は、他の判断要素についてこの続きをお話しますね。